「物価は上がるのに、手取りが増えない……」そんな悩みに一石を投じる、歴史的な税制改正が動き出そうとしています。
令和8年度(2026年度)の税制改正は、単なる微調整ではありません。会社員から個人事業主、そして子育て世帯まで、日本に住むすべての人の財布に直結する「イデオロギーの転換」とも言える大改革です。
目玉となる「年収の壁」の引き上げから、投資家待望の仮想通貨の税制変更、さらには「0歳からのNISA」まで、私たちが知っておくべき重要ポイントと、今から準備すべきアクションプランを分かりやすく解説します。
1. 「103万円の壁」が178万円へ!物価に合わせて減税される新制度
今回の改正で最も注目されているのが、所得税の基礎控除などの引き上げです。いわゆる「103万円の壁」が178万円へと大幅に拡大されます。
ここがポイント!
- 手取り額がアップ: 控除額が増えることで、これまで税金を払っていた層の負担が軽くなります。
- 日本初の「物価連動制」: 2年ごとの消費者物価指数(CPI)に合わせて控除額を自動で見直す仕組みが検討されています。つまり、「物価が上がれば、自動的に減税される」という画期的な仕組みです。
- 食事代の非課税枠が倍増: 会社が負担する昼食代などの非課税枠が、約40年ぶりに月3,500円から7,500円へ引き上げられます。福利厚生の充実が期待できる嬉しいニュースです。
【注意点】
所得税の壁は178万円になりますが、住民税(119万円)や社会保険(106万円・130万円)の壁は依然として残ります。「いくらまで働くのが得か」は、社会保険の動向もセットで見る必要があります。
2. 「0歳からのNISA」解禁と仮想通貨の分離課税
投資環境も劇的に変わります。特に現役世代や投資家にとって、資産形成のスピードを加速させるチャンスが到来します。
0歳からの投資!子供向けNISAの創設
これまで18歳以上限定だったNISAの年齢制限が撤廃されます。
- 月5万円(年間60万円)までの積み立てが可能。
- 生涯限度額は600万円。
- 12歳までは原則引き出し禁止: 「親が勝手に使い込む」のを防ぎ、子供の教育資金を確実に守る仕組みです。
投資家待望!仮想通貨(暗号資産)の分離課税化
長年「雑所得」として最大55%の税率が課されていた暗号資産が、ついに株と同じ20.315%の申告分離課税へ移行する見込みです(早ければ2027年から)。
また、損をしても翌年以降に繰り越せる「3年間の繰越控除」も導入される方向で、仮想通貨投資のハードルが一気に下がります。
3. 要注意!年収によって手取りが急減する「崖」の出現
今回の改正では、一部の年収層で「稼ぐほど損をする逆転現象(崖)」が生じるリスクが指摘されています。
「665万円」と「489万円」の崖
特定の年収を超えた瞬間に、税率が10%から20%へ跳ね上がり、さらに基礎控除額が104万円から67万円へと急減するポイントがあります。
- 会社員:年収665万円
- 個人事業主:所得489万円このラインをわずかに超えると、増えた収入以上に税金が増え、手取りが減る「崖」に直面する可能性があります。自分の年収がこの付近の方は、iDeCoやふるさと納税などの控除をフル活用する戦略が不可欠です。
その他の主な変更点
- 中古住宅のローン控除拡充: 控除限度額が3,000万円から4,500万円へ。最大控除額は約410万円と、ほぼ倍増します。
- インボイスの緩和延長: 免税事業者からの仕入れ税額控除が、2026年10月以降も「70%控除」として据え置かれました(完全廃止は2031年へ先送り)。
- EV(電気自動車)重量税: 2028年から、重いEV車に対して重量に応じた課税が始まります。「環境に良い=ずっと減税」の時代は終わりを告げようとしています。
まとめ:私たちが今すぐ取るべき「アクションプラン」
令和8年度の税制改正は、「狭かった道路(103万円の壁)を広げ、交通量(物価)に合わせて伸縮させる」ような柔軟な仕組みへのアップデートです。しかし、道路が広くなっても「崖」や「別の関所(社会保険)」があることを忘れてはいけません。
この激変期を賢く生き抜くために、以下の3点を検討してみてください。
- 働き方の再チェック: 178万円まで所得税はかかりませんが、社会保険料が発生するラインを把握し、世帯全体での着地年収をシミュレーションしましょう。
- 子供の口座開設準備: 0歳から10年積み立てれば、複利の効果で教育資金が大きく育ちます。制度開始に合わせて動けるよう、資金計画を立てておきましょう。
- 住まいの検討: 中古住宅のローン控除が大幅に有利になります。これから住宅購入を考えている方は、新築だけでなく「中古+リノベーション」も有力な選択肢に入ります。
税金を知ることは、大切な資産を守る第一歩です。今後の正式な決定を逃さないよう、アンテナを張っておきましょう!
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